目黒キューブフェスト2015 — FMC競技後研究

本記事は、Speedcubing Advent Calendar 2015 の16日目の記事です。
昨日の記事は、CubeVoyage による「クロスの素早い作り方」でした。 明日は Morooka 氏の記事が公開される予定です!楽しみです!

先日 2015年12月13日 (日) に東京都目黒区で開催された「目黒キューブフェスト2015」のFMC競技の反省会をしましょう (WCAリンク: FMCの結果)。 個人的に不満足な結果 (DNF) を残してしまったので、他の競技者の解答を見せてもらったり、本番のスクランブルを研究したりして、今後の競技につなげたいと思います。 本記事では、情報を提供してくださった当日の選手の解答と私の解答を紹介した後、私がいろいろ試してみた結果を報告します。



スクランブル

出題されたスクランブルです。

F2 D' F2 D F2 D2 L2 R2 F2 R2 U L' D' B' F' U L' D2 B U2 R

エッジコーナーペアが1つ、センターエッジペアが4つできています。
どうでもいいですが、珍しくスクランブルが21手でした (大会で出題されるFMCのスクランブルの90%以上は20手以下です。参考: Fewest moves challenge と God’s number)。

こっちがインバーススクランブルです。

R' U2 B' D2 L U' F B D L U' R2 F2 R2 L2 D2 F2 D' F2 D F2

エッジコーナーペアの数とセンターエッジペアの数はノーマルスクランブルと同じです。

当日の競技選手の解答紹介

大会当日の情報を提供してくれた競技者の解答を紹介します。

優勝者 田中選手の解答: 32手

田中選手、優勝おめでとうございます。 すでに、自身のブログ記事で公開 されていますが、田中選手の解答 (最終のものとインサートを明示したもの) を以下に示します。

D F L' D' L D' F L' F2 D F L' U' L D' L' U2 L' D R2 D' L2 D R2 U2 F2 U F' U' B U L' (32手)
D F L' D' L D' F L' F2 D F L' U L [ L' U2 L D' L' U2 L [ L2 D R2 D' L2 D R2 D' ] D ] U2 F2 U F' U' B U L'

インバーススクランブルからスタートして、最初からそろっているコーナーエッジペアを利用して4手 L U’ B’ U で2x2x2を作り、 ノーマルスクランブルに戻して、2x2x3 (10手)、F2L#3 (14手)、2CP2 (22手)、 コーナーインサート2回 (3手キャンセル x 2回) で最終的に32手とのことです。 InsertionFinder で調べたところ、最適解も32手でした。
ポイントとして、
(1) 最初からそろっているコーナーエッジペアとセンターエッジペアを利用して少ない手数で2x2x2を作ったこと、
(2) 2x2x3からのつながり方が綺麗だったこと、
(3) インサートの正確さ、
が挙げられると思います。

森川選手の解答: 27手 (書き間違いでDNF)

森川選手は27手の解答を見つけましたが、用紙への書き写し間違いで (U’ を U と書いてしまったそうです) 残念ながら DNF となってしまったそうです。

森川選手の (本来の) 解答 (最終のものとインサートを明示したもの) を以下に示します。

R D' R D' F2 B' U2 F' L B L' B2 L U2 L2 U' L B' R2 D2 L2 F' L2 D2 R2 F B2 (27手)
R D' R D' F [ F B' U2 F' B L2 ] L2 B' L B L' B2 L U2 L2 U' L [ B' R2 D2 L2 F' L2 D2 R2 ] F B2

すべてノーマルスクランブル、

[2x2x2] R D' R D' F (pre-move: F) (6手) から
[F2L#2] L2 B' L B L' B2 (pre-move: B2) (ここまで13手)

続いてここから3個目のF2Lスロットを入れ L U2 L2 U’ L、
18手EP5を得ます。 スケルトンを以下に示します。

R D' R D' F L2 B' L B L' B2 L U2 L2 U' L F B2 (18手EP5)

エッジインサートを2回して、27手の解答を見つけたようです (Optimal は 25手だったそうです)。 私はエッジインサートはやらないので (PLL U-perm のときは例外) この解き方は意味がわかりません。トップの4コーナーは偶然そろったのでしょうか。解説が求められます。
田中選手の解答と比較して、最初からそろっている唯一のコーナーエッジペアはあえて用いずに (それどころか崩して)、 R を回してくっつくコーナーエッジペアと最初からそろっているセンターエッジペアを利用して2x2x2を作ったこと、 が注目できるポイントです。 森川選手のメモ用紙を拝見して簡単に話を伺いましたが、何種類か2x2x2を試している中でこれがよかったので採用したとのことでした。

追記: 4コーナーがそろったのは偶然だったそうです。

※競技終了後 — 高木選手 & 上野選手の解答: 28手

3位の上野選手と、残念ながらDNFに終わってしまった高木選手が競技終了後に28手 (スケルトンは24手CP3) を発見したとのことで教えてもらいました。
解答 (最終のものとインサートを明示したもの) を以下に示します。

F2 L2 D2 F' L2 U F2 U' R2 F' R' F' U F' U2 B' U F2 U' B U2 F U2 R U R' F' D2 (28手)
F2 L2 D2 F' L2 U F2 U' R2 F' R' F' U F' U' [ U' B' U F2 U' B U F2 ] F2 U F U2 R U R' F' D2

ノーマルスクランブルから、F2 L2 D2 F’ L2 と回したところで、2x2x2 (白青橙ブロック) がそろうと同時に驚くことに 2x2x3 の pseudo ブロックが生成されます (pre-move: D2)。 この 5手 2x2x3 pseudo ブロックはなかなか見つけるのが大変そうです。これにより、6手で2x2x3が完成できます。 最初からそろっているコーナーエッジペアはここまでの回転で影響を受けないので、そのままの位置にとどまっています。6手2x2x3は高木選手が発見したそうです (競技終了直後に叫んでいました)。 2x2x3 の後、U F2 U’ R2 F’ R’ で F2L#3 まで完成させ、 F’ U F’ U’ でエッジを2個セットし、F2 U F U’ U’ R U R’ F’ でエッジの向きを変えスレッジハンマーすると、スケルトン (24手CP3) を得ます。

F2 L2 D2 F' L2 U F2 U' R2 F' R' F' U F' U' F2 U F U2 R U R' F' D2 (24手CP3)

ポイントは、2x2x3までの短い手数と鮮やかなエッジ処理にあると思います。

※競技終了後 — 田中選手一発解き: 23手 (CP3CO1)

田中選手が、競技後に一発解きで、スケルトン23手CP3CO1を披露してくれました。

D F2 U' B L' R U' R B2 U' B F' U F U B U2 B' U R' U R U2 (23手CP3CO1)

方針は、田中選手が本番で提出した解答と同様に最初からそろっているコーナーエッジペアを利用して2x2x2を作ります。

[2x2x2] D F2 U' B L' (5手)
[F2L#2] R U' R B' B' U' B F' U F (14手)
[CP3CO1] U B U2 B' U R' U R U2 (23手)

3つ目のF2Lスロットのペアを作るときに2x2x1ブロックが同時にそろいます。
田中選手は、その場でインサートして39手の最終解答を見つけましたが、私はここで手抜きして InsertionFinder に作業を投げます。 すると、optimal は32手であり、例えば次のような解答を得ることができます。

D F2 U' B L' R U' R B2 U' B F' U F U B U2 B' U [ U L2 U' R' U L2 U' R ] R' U R U2 [ U2 F' D F U2 F' D' F ]
7手キャンセルされて、
D F2 U' B L' R U' R B2 U' B F' U F U B U2 B' U2 L2 U' R' U L2 R F' D F U2 F' D' F (32手)

私の解答: DNF

私の解答はF2L#3まで17手で良くなくて、その後行き詰ってしまい、競技終了時間間際までそれに執着し続けてしまったためDNFになりました。
詳細を書いておこうかと思いましたが、結果DNFだし書く時間がないので (記事公開が明日になっちゃうので) 後で時間があるときにここに追記します。

後日見つけた解答たち

大会後、このスクランブルをいろいろいじってみて、次のいくつかの解答を見つけました。 しかし、手数の少ないものでも28手で、森川選手の27手 (25手) の記録にとどく解答を見つけることは大会後2日間では私の力ではできませんでした。

いろいろ試してみることを試みますが、大会と違いいくら時間があるからといっても、解答を0から探すのは探索空間が大きすぎて無謀なので、
(1) インバーススクランブルの4手2x2x2 (田中選手が用いたやつ)、
(2) 6手2x2x3 (高木選手が見つけたやつ)、
(3) 5手2x2x2 (高木選手が見つけたやつの親戚)、
を利用してみます。

田中選手の2x2x2 (4手) をベースにした解答: 33手

田中選手の2x2x2と命名しましたが、 インバーススクランブルを試して最初からそろっているコーナーエッジペアを利用したら自然と見つかるような割と普通の2x2x2ブロックです。
インバーススクランブルで、

[2x2x2] L U' B' U
[2x2x3] F' L2 D' L2 D2 (pre-move: D)
[F2L#3] L' U' F U (pre-move: F2)

F2L#3までで pre-moves 含めて15手かかっています。この後、エッジ合わせのうまくてかっこいい処理が思いつきません。

L U L' U' F' L F L

として、23手CP5のスケルトンを得ることができます。

L U' B' U F' L2 D' L2 D2 L' U' F U L U L' U' F' L F L F2 D

コスト削減のため、インサート処理を InsertionFinder に丸投げします。

L U' B' U F' L2 D' L2 D2 L' U' F U L U L' U' [ L F' L' F L F' L' F L F' L' F ] F' L F L F2 D [ D' F D B2 D' F' D B2 ]

インバーススクランブルに対する解答は

L U' B' U F' L2 D' L2 D2 L' U' F U L U L' U' L F' L' F L F' L' F L2 F' D B2 D' F' D B2 (33手)

※ノーマルスクランブルに対する答えはこれを逆手順にしたものです。 田中選手の最終解答より1手多くなっちゃいました。

高木選手の2x2x3 (6手) をベースにした解答: 28手

かっこいい6手2x2x3を用いて少ない手数のスケルトンが作れることが期待されます。今回はNISSを使います。 すなわち、ノーマルスクランブルで pseudo 2x2x3 を作る手順の逆手順を pre-moves として、インバーススクランブルを用います。 この2x2x3はブロックができた時点でコーナーエッジペアが2個もできているので優秀すぎます。

Pre-moves: L2 F D2 L2 F2
[2x2x3] D2
[F2L#3] U F' U' R F2 R2

F2L#3まで12手でできました。 ここで、青クロスF2Lの基本パターンの形になっているので、(a) F2 U F’ U’, (b) F U’ R U R’, (c) F’ U F2 U’ の3通りの入れ方が考えられます。 (b) はどうやらダメみたいです。 (c) はF2Lスロット挿入後、6手OLL + AUF (R’ D’ F’ D F R F’) で23手CP3ができるのですが、キャンセルは2手までで最終的に29手です。 (a) はF2Lスロット挿入後、OLL 37 + AUF (U’ R U R’ F’ R’ F R F) で24手EP3、Suneの2層回しのやつ (R U2 L’ U’ L U’ R’ F) で24手CP3のスケルトンができます。 これは、InsertionFinder に外部委託すると、それぞれ29手と28手という最終結果を得ます。3サイクル1個であれば私の自力でもコミュテータインサートの最適解を見つけられそうです。 この6手2x2x3ブロックをベースにした解答を考えると、上野選手 & 高木選手の結果と同じ28手でした。 この2つの例を見る限り、最初の 2x2x2 (2x2x3) ブロックを作った時点で結果の手数は決まっている運命なのでしょうか?

別の2x2x2ブロック (5手) をベースにした解答: 28手

上の2つの例を見る限り、本当に最初の 2x2x2 (2x2x3) ブロックを作った時点で結果の手数は決まっている運命なのか?
別のブロックで試してみます。

ノーマルスクランブルで F2 U2 B R2 U2 と回します。 これは、高木選手が発見した6手 pseudo 2x2x3 ブロック (5手 2x2x2 ブロック) の親戚です。 できるブロックは白青橙と同じ箇所で、ブロックをくっつける位置を別のところにしたバージョンです。 このブロックをベースにした解答がとても綺麗だったのでここで紹介します。

Pre-move: D2
[2x2x2] F2 U2 B R2 U2
[F2L#2] L D' R' D' L'
[F2L#3] D' F D

青クロスに注目すると、おもしろいようにクロスとF2Lがセットできます。 この後エッジ合わせも基本パターンで、CP5 (19手) が残ります。

F2 U F U' F'

InsertionFinder に最後の仕事をお願いします。

F2 U2 B R2 U2 [ U L D' L' U' L D L' ] L D' R' D' L' D' F D F2 U F [ F' R' B2 R F R' B2 R ] U' F' D2
F2 U2 B R2 U' L D' L' U' L R' D' L' D' F D F2 U R' B2 R F R' B2 R U' F' D2 (28手)

森川選手を超えることはできませんでした。

まとめ

結局、今大会の競技と競技後研究を通して何を得たのかよくわかりませんが、他の競技選手の解答を見て感じたことは、良い結果を残す大事そうなポイントは人それぞれ個性があるなということを感じました。
(1) 少ない手数の2x2x2 (これは今回の高木選手の強み)、いろんな2x2x2を試してみること (これは今回の森川選手の強み、多分他の人もやっていると思うけど)、
(2) F2L#3 後のスマートな5エッジ合わせテクニック (これは上野選手の強み)、
(3) 正確なインサートができること、特にCP5でも恐れずにやる (これは田中選手の強み)、
が強いポイントだと思いました。 もちろん、すべて万能にこなすことに越したことはありませんが、自分の強みが何なのかわかってそれを中心に伸ばしていくことが重要そうだと感じました。

個人的に大会で何度も経験することは1つのブロックややり方にこだわりすぎて行き詰まってしまい完成できないことが多いです。 打破するためには、
(1) 深追いするのは諦めて別のブロックをためしてみる潔さとスピード、
(2) 最後の方が難しくてもゴリ押しで完成まで持っていけるようなテクニック力の高さ、
少なくとも一方が必要です。 私はCP5が嫌でどうしても無意識のうちに避けてしまう傾向があるけど、それはただの損なので立ち向かっていかないといけないなということも思います。 FMCはまだ1回しか入賞したことがないので、広い意味でのFMCの練習して大会で安定した結果を出せるようになりたいです。来年がんばります。

謝辞

快く解答情報の提供および記事掲載への許可してくださいました、田中選手、森川選手、高木選手、上野選手には深く感謝いたします。ありがとうございました。

おわりに

本記事に対するコメントや、当日 FMC に出場された方で「私の解答はX手だったよ!」とか「DNFだったけどこんなにおしかったんだよ!」とか感想・アピール等がある方は、ぜひコメントを残してください。 もちろん出場されていない方でも「俺はもっとすごい解答見つけたぜ!」とかあったらぜひ書いてください。 名前欄を空欄にすると、匿名でもコメント投稿できます。

話は変わりますが、大会で3x3x3目隠しで優勝したYY選手と初めて話して、 私が以前作成した スクランブル生成ツール が練習に役に立ってると聞いて大変嬉しかったです。 後日、もっと細かいオプション指定を可能にしたバージョンを公開する予定です。

meguro-cube-fest-2015-fmc-kurumi

Fig. 昼休みに初めてみたらし胡桃のやつ食べたけどうまかった。きなこのやつも食べてみたい。

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