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triboxストアが蛍光色ステッカーを一新するそうで,ステッカー色に関する話題です.
ステッカー色の”差”を曖昧な主観的な感覚の判断ではなく,客観的に見ることができないか考えました.
色間の類似度ってどっかで定式化されてないかなーって思って調査してみたら存在したので実際に計算してみました.
新蛍光色ステッカーの公式レビュー.
triboxレビューでもお馴染みのキュービスト5名に、triboxステッカーの新しい蛍光色を試してもらいました。概ね「良くなった」との評価を頂き安心しております。ただやはり、Red、Orange、Light Orangeの色みが近いのが気になりますね。
— tribox Japan (@triboxJP) 2015, 1月 19
従来から、赤とオレンジをどちらも蛍光にする場合は、RedとLight Orangeの組み合わせが人気でした。しかしそれよりも、赤を032か031にされるお客様が多数で、この場合さらに視認性が向上します。
— tribox Japan (@triboxJP) 2015, 1月 19
同じ理屈で、黄と緑の色みを遠ざけるため、蛍光Yellowに合わせる緑を062か061とするのも人気です。
— tribox Japan (@triboxJP) 2015, 1月 19
triboxのステッカー販売ページで閲覧できるステッカー各色のRGBカラーコードをLab色空間に変換します.
なぜLab色空間に変換するのか?
Lab色空間での2色間のユークリッド距離を計算すると人間の感じる色差にだいたい対応するらしいからです.
そうしてステッカー全54色の互いの色間の類似度 (similarity) を計算します.
詳細な色彩工学の理論を紹介するWeb上で閲覧できる日本語の文献は,
Lab色空間 – Wikipedia,
色色雑学-楽しく学べる知恵袋 | コニカミノルタ,
色モデル,
色空間の変換,
等があります.
詳しく知りたい方はこれらをご覧ください.
今回はPythonで色を扱うpython-colormathモジュールを利用してさくっと計算しちゃいます.
そもそも本来の色をディスプレイに移すRGBに変換する段階で,照明等の環境による影響,ビット落ち等の影響により,本来の色を厳密に再現することは不可能ですので,今回の結果は大雑把に見てください.
厳密に実験するには,分光測色計で実際の試料を測定してLab空間での数値を取得する必要があります.
そこまではやりません.
(ちなみにコニカミノルタが測定器を無料レンタルしてるのでお金なくてもやる気があれば実験することはできます.)
では,計算結果を示します.
カラーコードはtriboxストアのステッカー一括購入ページから取得しています.蛍光色の色は変更前の色です.
結果を表にしたものを結果デモページにアップしています.
数値が大きいほど異なる色であることを表しています.
スクリーンショットの画像です.
例えば,一番似ている2色は「■020 : Golden Yellow」と「■蛍光Light Orange」だということがわかります(色差は1.79).
逆に,一番似てない2色は「■518 : Steel Blue」と「■蛍光Yellow」です(色差は108.81).
今回は数値だけのRawデータを示しました. 本当は結果をグラフィカルに表示させたり,結果に対する詳細な分析や考察をしたりしたかったけどやりません. 今度気が向いたらやります.
このデータから最もお互いに離れた6色は何か?という問題を考えることができます. それにはまず目的関数となる「6点間の距離を表す何か」を定義しないといけません.†1 目的関数を設定すれば組合せ最適化問題になります. 簡単に解ける問題か効率的に解けない問題かはすぐには判断できません.†2 ちなみに,これで6色ともお互いに最も離れた結果が得られますが,実際には対面同士は似たような色でも良くて隣接面はなるべく違う色がよかったりするような気がする(意図的か否か不明だが標準配色はそうなってる)のでそんなようなことも考慮に入れて制約条件とするといい感じの問題ぽくなります.
一応,数値の生データを眺めるだけでも得られることはあると思うので,参考になれば参考にしてみてください.
計算用のPythonスクリプト,及び結果 (CSVとHTML) はGitHubリポジトリで公開しています.
自分にベストマッチする6色を見つけましょう!
ちなみに,僕はPinkよりもRed派です.
2015年1月21日 追記
最適な色組合せを求める方法として,色相環の等分とか球へマッピングして等分する等の方法が他に考えられます.
それらは無機質な量 (例えば彩度とか明度とか) を基準とした色空間であり人間の感性 (直感というよりは無意識の中にある感覚) とぴったり対応しません.
そこでそれを加味して変換した色空間が本文で書いた色空間です.
光のスペクトルみたいに数学的になんか綺麗だな,じゃなくて一見ヘンテコリンだけど実は一番いいみたいなのが計算で求められるのが面白そうだからこのような計算 (の準備段階) を試みてみました.
本記事はあくまで遊びのネタ記事ですのであまり真面目に捉えないでくださいね!
ステッカー買うなら素直に蛍光色セットおすすめです!
triboxストアのステッカー一括購入ページはこちらです.
triboxストア / ステッカー一括購入
2015年1月25日 追記
triboxストアのTwitterアカウントに本記事を紹介してもらいました.
実際の具体的な一配色で色間距離を計算して考察されています.
triboxステッカー色の任意2色間類似度を計算してみた – terabo http://t.co/427Oa2JIvj triboxテクニカルアドバイザー、てらださんのブログです。「あなたの配色は何点?」最も低い数値を探してみてください。それがあなたの配色の弱点かもしれません。
— tribox Japan (@triboxJP) 2015, 1月 25
例えばこの配色は28.51点です。YellowとLight Orangeが近く、この2つが010 Whiteにも近い、との結果です。この場合、濃いオレンジを使うと良さそうですね。28点でも十分に識別できるという場合は問題ありません。 pic.twitter.com/xa5N9vsXf9
— tribox Japan (@triboxJP) 2015, 1月 25
†1: 例えば,6個の各点の最近傍点との距離の最小値の最大化とか,6節点のユークリッド距離を重みとした重み付きグラフを考えたときの最小全域木の経路長の最大化とか,6節点の最小シュタイナー木の経路長の最大化とか,TSP (巡回セールスマン問題) の経路長の最大化などが考えられます.
†2: 全探索で解く場合,54色から互いに異なる6色を選択する組合せの数は 54C6 = 25827165 です.